静かなる怪異。

冬になると、必ずヤツがやってくる。
私の天敵でもあり、また私の内にもそいつは秘められている。
そして、ある時は共鳴する。
その共鳴した時こそが・・・・・・私達がヤツに襲われる時なのだ。


これほどまでにヤツを憎いと思った事はない。
昨日から数えたとしても、私だけでも襲われた回数は既に十を越している。
今までに何人を、そして何回襲ったのか考えるだけで、気が狂いそうになる・・・。
ヤツは異常だ。人を襲う事などなんとも思っていないに違いない。
むしろ、ソレ自体を楽しんでいる節さえある。
そうでなければ、同じ人間を何度も襲う事などしないだろう。
しかも恐ろしい事に、ヤツは襲う人間を選ぶ。気に入られると執拗に追われ・・・何度襲われるか分った物ではないのだ。


さて、その選ぶ基準というのは一体何なのか。まさか直感で選んでいる訳ではないだろう。
顔でも、性別でも、血液型でもない。 いや、血液型はちょっと関係があるかもしれないが。
ヤツが襲う人間を選ぶ基準。それは、体質である。
生まれつき、ヤツと共鳴する物を身体に溜めやすいか、そうでないかで判断が分かれる。
私は正に前者だ。 たぶん、ヤツと共鳴しやすい体質なのだろう。
人が生まれ持った体質は、根本的に変える事が出来ない。
故に、怖いのだ。
自分は、ヤツに襲われやすい事を、知っている。
知っているが故に、人は恐怖する。


悲しきかな、知ると言う事は知識を得られる反面、恐怖と言うリスクも伴ってしまう。
・・・だが、私には恐怖せぬように無知でいようなどという甘ったれた考えを持つ気など到底ない!
確かに、ヤツを倒す方法は未だない。ヤツは確固たる「存在」ではなく、曖昧な「現象」としてそこに在るからだ。
しかし、襲われる事を未然に防ぐ手立てならあるのだ。
知る事で恐怖と言うリスクを背負おうとも、私にはヤツを防げるというその1点のみで報酬は余りある。
むしろ、私はヤツと闘うという事に、喜びさえ感じられる。
生まれてからこの方ずっとヤツに襲われ、苦痛を強いられてきたこの境遇 だ か ら こ そ 、
一矢報いる事が出来るのだと俺は思うッッ!!
ヤツを「知る」と言う事は、深淵を覗き込むようなもの。
知れば知る程、自らの恐怖は深い物となる。
だが、その反面ヤツを防ぎ、また、いつか倒せる日が来る時の為に、知識を力とし、闘っていこうと思う。
たった今この瞬間からッッ!! 私は知識を力に変換する魔術師に成る事を決意するッッ!!
ヤツを倒す為に、自分自身もヤツに近づく事になるだろう。
ミイラ取りがミイラになるという言葉そのままかもしれないが、倒すにはそれしかない。
怪異には、こちらも怪異をもって闘う。 それしか方法は存在しないのだ。
黒き芸術をもってこの身で闘える事を感謝しよう。 そして、いつの日かヤツを倒す時が来ると今ここに誓おうッッ!!





まず、ドアノブを握る時はハンカチを持ちながら回す所から始めようと思った、冬のある日でした('ω`)。
・・・俺物書きになろうかな!静電気についてこれだけ書けるバカは俺ぐらいだろう。ははは!